今の時代、就職を有利に進めるには、IT系の資格の取得が重要だといわれています。ただ、IT系の資格と一口にいっても、その種類は多種多様です。どの資格を取得すればよいか迷っている方には、まず「ITパスポート試験」をお勧めします。
この記事では、ITパスポート試験の概要をまとめました。勉強に役立つ情報も解説しているので、受験を検討している方はぜひ参考にしてください。
ITパスポート試験とは
まず、ITパスポート試験とはどのようなものなのかをみていきましょう。
ITパスポート試験の特長
ITパスポート試験(Information Technology Passport Examination:IP)とは、ITに関する基礎的な知識を有することを証明する国家試験です。全部で12の試験区分がある、情報処理技術者試験のひとつとなっています。
ITパスポート試験は、すでに廃止された「初級システムアドミニストレータ試験」の後継資格の位置付けです。試験ではビジネスに必要な情報機器およびそのシステムの把握・遂行と、システム化推進のための基礎知識が問われます。
ITパスポート試験の受験資格
ITパスポート試験に、受験資格は特にありません。従って、年齢・経験・資格の有無を問わず、誰でも受験できます。令和5年度の応募者数29万7,864人、受験者数26万5,040人という実績からも分かる通り、近年注目度の高い人気資格です。
主な受験者層は、ITの勉強を始めて間もない学生や社会人とされています。とはいえ、小学生以下も受験が可能であり、令和6年8月時点の最年少合格者はなんと7歳の小学1年生でした。
ITパスポート試験の取得が推奨される人
ITパスポート試験は、ITに携わるすべての人が取得すべき資格だといえます。今やITは社会全体に深く浸透しており、どのような業種・職種にも求められる知識だからです。
つまり、これから就職する高校生・大学生からすでに社会人として働いている方まで、幅広い人に受験が推奨されます。なお、学生より社会人の合格率の方が若干高いことから分かる通り、社会に出てからも十分取得がめざせる資格です。
今後のさらなる進展が予想されるシステム化の普及と高度化に伴い、ITパスポート試験の重要性はますます高まっていくでしょう。
ITパスポート試験の合格までに要する勉強時間
ITパスポート試験に合格するために必要な勉強時間は、平均して140〜150時間程度です。ただし、現在のIT知識の有無によって勉強の所要時間が異なるため、以下で2パターンに分けて説明します。
IT知識がある方
基礎的なIT知識を有する方の場合、ITパスポート試験の合格までに必要な勉強時間は100時間程度だといえます。情報系の学校に在籍中もしくは卒業した方や、ITビジネスの実務経験がある方は、基礎的なリテラシーの勉強が省略できるためです。
また、ITパスポート試験では財務・法務や経営戦略等の分野からも出題されるので、経営学の知識がある方も勉強の所要時間が短くなります。
IT知識のない方
ITに関する知識が一切もしくはほとんどない方の場合、ITパスポート試験の合格には最低でも約180時間は必要だといわれています。ITパスポート試験は、出題内容は難解ではないものの、基礎的な知識が幅広く問われる試験です。そのため、学習のコツをつかむまでに少し時間が掛かるかもしれません。
よって初学者の方には、余裕を持たせたスケジューリングと、効率的かつ効果的な勉強方法が求められます。
ITパスポート試験の受験をお勧めする5つの理由
ITパスポート試験は比較的新しく設置された資格ですが、次のようなメリットを背景に、今後よりいっそう注目されるといわれています。
- 社会人としての基礎力が身に付く
- 就職・転職や進学で有利になる
- 難易度が程よい
- 更新の必要がない
- 上位資格へのステップアップにつながる
社会人としての基礎力が身に付く
ITパスポート試験の合格をめざして学習を進めるなかで、ITの基礎知識が網羅的に身に付きます。情報セキュリティやコンプライアンスのようなIT管理に関する内容も学べるため、ITに関連する社内外のコミュニケーションが円滑になるでしょう。
そのほか、経営・会計・財務等のストラテジ系(経営全般)の知識も身に付くことから、社会人としての基礎力が高まります。
就職・転職や進学で有利になる
ITパスポート試験に合格すれば、ITの基礎知識があることが形として示せるため、自らの実力の根拠になります。現代の情報社会では、社会人ならある程度のIT知識があって当たり前だといっても過言ではありません。ゆえに、業種や職種、進路に関わらず、ITパスポート試験を受験しておいて損はないでしょう。
また、ITパスポート試験は国家資格であり、認知度や信頼性も抜群です。近年は、採用時や入試でITパスポート試験のスコアを確認するケースも増えているので、就職や進学で有利に働くと考えられます。
難易度が程よい
ITパスポート試験は情報処理技術者試験でもっともチャレンジしやすい資格であり、IT系の資格の入門としてちょうど良い難易度です。よく引き合いに出されるMOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)とは異なり、実技試験もありません。
ITパスポート試験の合格率は例年50%前後となっています。つまり、2人に1人は合格することから、しっかり準備することでどんな方でも十分に合格がめざせるはずです。1日当たり2時間ほど勉強すれば、IT知識がある方なら約1か月〜1か月半、初学者でも3か月程度しか準備期間がかからないといわれています。学業や仕事等で忙しい方でも、スキマ時間を活用すれば勉強時間が十分確保できるでしょう。
更新の必要がない
ITパスポート試験は、受験時点で合格する知識があることを認定する資格であり、有効期間がありません。定期的に更新を要する資格が多いなか、維持に費用がかからないのは大きな利点といえるでしょう。得られる知識や効果の高さを踏まえると、コストパフォーマンスが非常に高いといえます。
上位資格へのステップアップにつながる
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験のファーストステップともいえる資格です。そのため、次の段階である「情報セキュリティマネジメント試験」や「基本情報技術者試験」等の上級資格へステップアップする足がかりになります。
ほかの上級資格はITパスポート試験から一歩踏み込んだ内容・構成になっているため、はじめに取得しておけばその後の対策も立てやすくなるでしょう。
【令和6年度最新】ITパスポート試験の実施について
ここからは、令和6年度に実施されるITパスポート試験に関する情報をお伝えします。なお、本記事の情報は令和6年(2024年)9月現在のものなので、受験の検討時は必ずITパスポート試験の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
試験日・合格発表
ITパスポート試験は、全国の会場で随時実施中です。都道府県ごとに複数の試験会場・日程が設定されているため、自分の好きなタイミングで受けられます。また合格発表日は、基本的に受験月の次の月ですが、合格証書発送日および受験番号の官報公示日はさらにその翌月です。
申込期間は、受験手数料の支払方法および時間帯によって以下のように異なります。
支払方法 |
予約可能日 |
---|---|
クレジットカード・バウチャー決済 |
|
コンビニ決済 |
申込日の5日後~3か月後まで |
ただし、身体の不自由がある方を対象とする特別措置での筆記試験は、春期(4月)と秋期(10月)の年2回実施されます。特別措置試験への申し込みには、身体障害者手帳の写しもしくは医師の診断書の提出が必要であり、手続きや受付期間も通常とは異なるので注意しましょう。
詳細は、ITパスポート試験のWebサイトのほか、情報処理推進機構の問い合わせフォームから確認してください。
受験手数料
ITパスポート試験の受験手数料は7,500円(税込)です。支払方法は、クレジットカード、コンビニ、バウチャーチケット(専用電子チケット)の3通りから選べます。それぞれ別途手続きが必要なため、公式Webサイトをチェックしましょう。
なお、申し込み後の支払方法の変更および別日程・試験区分への充当はできないので注意してください。領収書は利用者メニュー画面からのダウンロード形式であり、期限は支払確認日から1年間です。
試験の形式
ITパスポート試験の形式はCBT(Computer Based Testing)方式です。CBT方式とは、簡単にいうとコンピュータを使った受験方法であり、国家試験としては初めての試みとなっています。
またITパスポート試験は、CBT方式のなかでも指定の会場で受験するテストセンター型です。ただし、身体の不自由等のある方は、開催される特別措置での筆記試験が受けられます。
そしてITパスポート試験の採点方式はIRT(Item Response Theory:項目応答理論)方式であり、項目ごとに点数が設定されているわけではありません。項目ごとの難易度・識別力等の項目特性から推定された正答率に基づき、算出される評価点が合格基準です。
試験内容・出題範囲と合格基準
ITパスポート試験では、120分で100問の小問が出題されます。なお特別措置で時間延長が適用される場合は、上記の1.5倍の180分です。
ITパスポート試験で出題される分野は、以下をご参照ください。
出題分野 |
出題される小問数 |
---|---|
ストラテジ系(経営全般) |
35問程度 |
マネジメント系(IT管理) |
20問程度 |
テクノロジ系(IT技術) |
45問程度 |
合格基準は各小問1000点満点中、総合評価点が600点以上、分野別評価点が300点以上です。
申し込みの流れ
ITパスポート試験の受験申込の方法は以下の通りです。
- ID登録
- 詳細入力
- 確認票の取得
内容変更は試験日の3日前までとなっています。新たな試験日として選択可能な期間は、支払いの有無によって異なるので、しっかりとチェックしておきましょう。
受験の注意点
ITパスポート試験の受験には、Webサイトからダウンロード・印刷した確認表と、本人確認書類が必須であり、忘れると受験できなくなる恐れがあります。また、試験会場への腕時計の持ち込みは禁止です。スマートフォン等のモバイル機器を含め、指定されたもの以外は机上に置いてはいけないため、その他を収納するカバン類も持参しましょう。
試験当日の流れは、まず会場への入館・受付後、時間になったら会場へ入室し、端末にログインします。コンピュータの問題表示画面は白黒反転、背景色、文字色、表示倍率、画面の明るさ(挙手制)が変更できるので、適宜調節してください。
なお、遅刻による途中入室は可能ですが、試験時間の繰り下げはできません。くわえて、一旦退出したら、トイレや体調不良等の特別な理由がない限り再入室が認められない点にも注意しましょう。
ITパスポート試験の勉強方法
ITパスポート試験の勉強方法は主に次の2通りです。
- 独学する
- 学校で学ぶ
独学する
ITパスポート試験では、独学のみで合格をめざす方もいます。独学での勉強方法は、参考書、過去問、インターネットの学習サイト、通信講座等がメインです。
ITの知識がある方は、出題傾向の把握と問題の回答、苦手分野の理解にチャレンジしましょう。また、情報処理の知識のほか、ストラテジ系分野からも出題されるため、経営全般の知識をいかに習得できるかが攻略のポイントです。
対して初学者の場合は、まず専門用語の理解から始め、その後にテキストや問題形式の勉強に入る流れが基本の勉強方法となります。ITパスポート試験に関する書籍や情報は膨大にあるので、自分に合うものを探し出すことが重要です。
また独学は自分のペースで学習が進められる一方で、内容の理解や重要ポイントの見極めのほか、モチベーションの維持も大きな課題となります。従って、独学はITの学習もしくは実務経験のある方向きの勉強方法であり、初学者向きではありません。
随時更新される最新情報の確認等、すべてを自分で行わなければならないため、見落としやミスに注意しましょう。
学校で学ぶ
現在、ITパスポート試験に出題される分野が学べる学校が数多く設立されています。初学者の方や自分だけで勉強するのが不安な方は、学校でメンターに師事して学ぶ方が効率的です。
学校に入れば分からない問題が速やかに質問できるうえ、学習や攻略のポイントもスムーズに身に付きます。また、プロの指導者や同じ目標を持つ仲間が身近にいることは、モチベーションの維持にも効果的です。
なお、ITパスポート試験に関する知識が学べる学校には大きく分けて専門学校と大学の2種類があります。専門学校は、資格取得のために必要な内容がピンポイントで学べるのが特長です。ただし専門学校で学べるのは、あくまで試験にかかわる知識のみに限られます。そのため学修支援以外の付随要素の充実度が低いと、せっかくITパスポート試験に合格してもその後に活かしきれない可能性があるので注意してください。
一方で大学は、ITパスポート試験に関わる分野だけではなく、幅広い知識が身に付けられます。努力次第では、上位資格やその他の資格の同時取得も夢ではありません。また、卒業に必要な単位を修得すれば、学位が取得できるのも大きなメリットです。学修支援はもちろん、進路選択や卒業後のキャリア形成のサポート等も充実しており、就職・転職の幅が広がるでしょう。
ITパスポート試験の勉強にもっともお勧めな教育機関は通信制大学です。毎日通学する必要がないため、働きながらでも自分のペースで学べます。独自の資格取得奨励金制度を設けている通信制大学を選べば、受験の金銭的な負担も軽減するはずです。
ITパスポート試験の合格をめざすならサイバー大学へ!
ITパスポート試験は、これから情報系の分野の勉強を始める方や、ITの知識があることを目に見える形で証明したい方に最適な資格です。試験の難易度もファーストステップにちょうどよく、独学でも勉強できますが、幅広い知識を効率よく身に付けたいなら学校で学ぶことも視野に入れてみてください。
「サイバー大学」では、情報処理の基礎知識やマネジメント、経営・法務等、ITパスポート試験の勉強に活かせる講座を多数開講中です。ITのプロの講師陣の下、試験や実務に役立つ実践的な内容が分かりやすく学べます。
情報セキュリティマネジメント試験や基本情報技術者試験等の上級資格のほか、ITに関するその他の国際資格や民間資格の取得も同時にめざせるのもポイント。さらに資格取得の奨励金制度を設けており、ITパスポート試験もその対象です。合格かつ所定の条件を満たした学生には、奨励金が支給されます。
そのほか、提携している外部の資格取得支援講座の受講優待制度も充実。在学中のサポートはもちろん、卒業後の再履修や継続したキャリア支援も可能です。ただ「学べる」だけではなく「学び続けられる」学校を探しているなら「サイバー大学」で、自分だけの学びをデザインしてみませんか?