2025/06/13

公益財団法人 放射線影響研究所

業種
  • 官公庁
  • 公社
  • 団体
従業員数
178人(2025年5月時点)
  • ネットワーク分野の知識習得
  • 履修証明プログラム

「組織が主体性を持って人材育成を」履修証明プログラムで実現する先端技術教育

背景

  • 原子爆弾の被ばくに関する機微性の高い情報を扱う特異な研究環境で情報システムを内製/運用。
  • 従来のOJT・短期研修では急速に進化・複雑化する最先端技術への対応が困難。
  • 中途採用は給与体系の制約により限界、新たな人材育成メソッドの導入が急務に。

導入

  • サイバー大学の講義を以前から視聴されていた情報技術部部長O.S様が、カリキュラムの質の高さを実感していたことが導入の決め手に。
  • サイバー大学のフルオンラインの学習環境で仕事との両立が可能と判断し、Z世代3人を選定。
  • 研究所の研修の一つとして位置付け、勤務時間内での受講を許可することでスムーズに導入。

成果

  • 基礎から最新技術まで体系的学習で知識の復習・確認が効果的に進行。
  • 明確な目標を持った学習により、実践的な学びを実感。
  • スキマ時間活用と柔軟な受講スタイルで業務との両立を実現。

展望

  • ネットワーク分野にくわえ機械学習分野の学習を視野に入れ、フルスタックエンジニアとしての人材育成へ。
  • 成果を基に他部署への横展開、情報リテラシー・セキュリティ教育拡充を計画。
  • 組織による積極的な人材育成のモデルケースとして他部署への展開を期待。
広島と長崎の原爆被爆者を対象とした世界唯一の長期追跡調査を80年近く継続し、放射線の人体影響研究において国際的に重要な役割を果たす公益財団法人放射線影響研究所。同研究所では、極めて機微性の高い研究データを扱うため、データベースやアプリケーションソフトウェアのほとんどを自己開発で賄っており、高度な専門知識を持つIT人材の育成が不可欠となっている。しかし、昨今の情報技術の急速な進歩により、従来の教育手法では限界が見えてきたため、新たな人材育成戦略としてサイバー大学の「履修証明プログラム」を導入。導入の背景から具体的な成果、そして今後の展望まで、情報技術部部長のO.S様と受講者の方々にお話を伺いました。
公益財団法人 放射線影響研究所

背景

Q. サイバー大学の「履修証明プログラム」を導入するに至った経緯や背景についてお聞かせください。

O.S様:当研究所の情報技術部は、研究員1人と一般職員14人の計15人で構成されており、被験者様からご提供いただいた非常に機微性が高い情報の管理・運用業務に従事しています。研究所の特異性・秘匿性の高い研究環境では、研究で利用するデータベースやアプリケーションソフトウェアをほとんど内製で賄う必要があるため、情報技術部のスタッフは、各分野における専門知識を有するエキスパートで構成されなければなりません。
これまでは主にOJTによる教育や、専門知識を有する者の中途採用、情報系学部の新卒採用、関連サプライヤが提供する短期研修への参加等によって部内の人的知財を維持管理してきました。しかし、昨今の情報システム技術はクラウド環境、AI、ビッグデータ等、ソリューションの複雑化や適用領域の拡大に伴い、求められる知識の量が指数関数的に増大しています。

従来のOJTや短期研修では十分な効果を維持することが難しくなってきましたし、先端技術の専門知識を有する人材の中途採用は、研究所が規定する給与体系では採用が困難です。このような課題を踏まえ、今後の人的知財の維持管理メソッドをあらためて見直す必要が生じていました。

Q. 特にどの分野の知識不足を課題として感じていらっしゃいましたか?

O.S様:現在の研究所内における人的知財として、特にネットワーク分野と機械学習分野がウィークポイントであると認識しています。ネットワークはプロトコルとしては標準化されていますが、管理運用的な実践分野では、製品によってOSもコマンド体系もまるで違います。そのため、体系的な基礎知識にくわえて実践的なスキルの両方が必要になりますが、これを従来の単発的な研修で習得するのは非常に困難でした。

やはり大学教育のような体系的なカリキュラムで、相互関係を理解しながら学んでもらいたいという思いが強くありました。点ではなく線での学習が必要だと考えていたのです。

導入

Q.「履修証明プログラム」を選んだ決め手を教えてください。

O.S様:私自身、サイバー大学の講義に触れる機会が多くあり、貴学のコンテンツの質の高さを常々実感していました。体系的で実践的なカリキュラム構成、そして何より完全オンライン型で受講生の環境に合わせて学習を進められるという点が、仕事を持ちながら学ぶ職員にとって最適だと確信していました。

「履修証明プログラム」という新しい枠組みをご紹介いただき、まさに渡りに船という感じでした。仕事を持ちながら二足の草鞋として学習を効率的に継続するという、この二律背反を解決できる理想的な教育システムだと感じたのです。

Q. 導入にあたっての所内プロセスや受講者選定について教えてください。

O.S様:「履修証明プログラム」は研修という位置付けです。理事への稟議では、なぜこの研修が必要なのか、どのような効果が期待できるのかを体系立てて説明し、納得してもらえる内容で提案したところ、特段の反対もなく承認されました。

対象人材の選定は、デジタル環境に慣れ親しんでいるZ世代をターゲットにしました。中堅以上の職員は、エキスパタイズされた知識の確立ができている反面、他領域や全く新しいものに対する知識の適合が難しくなる場合があります。一方、若い職員はまだ学部を出たばかりで頭も柔らかく、知識を吸収してくれると期待しています。

部内からは「大卒で学部教育を受けているのに、なぜあらためて学部の学習が必要なのか」という質問もありましたが、情報分野は新しい技術が常に出てくる分野です。これまで習得した技術や知見を前提として、さらに新しい知識を習得していく必要があると説明しました。

Q. 受講中の職員へのフォローはどのように行っていますか?

O.S様:勤務の一環として勤務時間内の受講を認めていますので、職員が自身の業務のスキマ時間や進捗に合わせて裁量的に調整しています。受講者の自主性を重視しつつ、サポートが必要な際には相談に応じることにしています。

成果

Q. プログラム開始から現在まで、どのような手応えを感じていますか

O.S様:導入して間もないため、成果についての具体的な評価は今後の課題ですが、非常に良い手応えを感じています。

多くの職員は既に大学を卒業しているため一定の基礎学力は身に付いていますが、情報技術分野では従来の古い知識ではなく、日々進歩する先端技術に対応できる基礎教育が必要です。今回の「履修証明プログラム」は、その課題に対する有力な解決策になっていると実感しています。
I.M様:ネットワーク技術基礎、情報セキュリティ入門の講義を通して、基本となる考え方や代表的なプロトコル等について半年の期間をかけて丁寧に学習できたことで、知識や考え方が身に付き、今後応用となる内容を理解するための基礎が固まりました。
F.T様:現在は基礎科目のみ受講が完了した状態ですが、学生時代に学んだ知識の復習・確認ができたと同時に、そこに最新の情報が盛り込まれていたことが良かった点です。また、仕事の都合で途中で視聴を中断しても、あとで続きから視聴できる等、学び方に余裕があるのが社会人としては非常に助かります。
S.T様:大学生のころは漠然と講義を受けていましたが、今は業務に必要な知識を得るという明確な目標があるうえで講義を受けているので学んだことが着実に身に付いていると感じます。できるだけ余裕をもって受講期限の1週間までには終わらせるよう、毎週1回はまとまった時間を取るようにしていますが、業務量との関係で、どうしてもそれが難しい場合は、各回4章構成であることを活かして、スキマ時間を使って複数回に分けて受講しています。

左からI.M様、F.T様、S.T様

展望

Q. 今後の受講計画や目標を教えてください。

O.S様:現在の研究所内では、ネットワーク分野と機械学習分野が特にウィークポイントとなっています。今回の「ネットワークセキュリティ総合プログラム」では主にネットワーク分野の知識習得を目的としていますが、今後は機械学習分野のプログラムも受講してもらいたいと考えています。理想を言えば、部内の中核となる職員には、あらゆる技術分野に対応できるフルスタックエンジニアをめざしてほしいと考えています。

Q. この取り組みをどのように発展させていく予定でしょうか?

O.S様:まずは現在受講している3人が一定の成果を上げることで、その効果を所内に示していきたいと考えています。1年半程度かけて成果を出せれば、他部署への横展開を提案したいと思います。

特に情報リテラシーやセキュリティリテラシーの向上は、当研究所のような機微性の高い情報を扱う組織では必須です。職員の意識レベルは高いのですが、それをより技術的・実践的に実装してほしいという思いがあります。そのために、今後は科目等履修生としての受講も予定しています。

Q. 同様の取り組みを検討する企業・団体へのアドバイスをお願いします。

O.S様:多くの組織では、職員のスキルアップは個人の自己研鑽に依存しているのが現状だと思います。やる気のある一部の人が自分で勉強して知識を身に付け、それに組織が頼っているという状況です。

しかし私は、組織がもっと積極的に職員の教育に取り組むべきだと考えています。個人の努力に任せるのではなく、組織として計画的に人材を育成することが、今の時代には必要不可欠です。「履修証明プログラム」のような体系的な学習機会を組織として用意することが、その第一歩になると確信しています。
企業・団体情報

公益財団法人 放射線影響研究所

公益財団法人放射線影響研究所は、1975年に設立された日米共同研究機関です。広島・長崎の原爆被爆者を対象とした世界唯一の長期追跡調査を継続し、放射線の人体影響に関する科学的知見を蓄積・発信しています。厚生労働省と米国エネルギー省の共同出資により運営され、分子生物学から臨床レベルまで幅広い研究を通じて、がんの発症メカニズム解明や放射線防護基準の策定に貢献。世界的に貴重な研究データを適切に管理・活用するため、高度な情報技術と厳格なセキュリティ体制を構築し、人類の健康と安全に寄与する研究活動を推進しています。