大内 瑞恵 | 教員インタビュー | 通信制大学 | サイバー大学
日本古典文学

日本古典文学

大内 瑞恵
  • 客員准教授
  • 教養科目

1. 出会い

先生の専門分野とその出会いについて教えてください

私は、教養科目「日本文学入門」を担当しています。江戸時代、つまり近世に読まれた和歌を中心とする、日本文学の研究が専門です。

日本文学を学ぶきっかけとなったのは、学生時代の出来事です。私は北海道の高校から本州の国文学科がある大学へ進学しました。入学してしばらくすると梅雨時になったのですが、これが本当に連日の雨で湿気がものすごいものでした。北海道には梅雨がないので「これが梅雨か」と初めて本当に身をもって実感しました。高い湿度、しとしとと続く雨、田んぼで鳴く蛙など。泉鏡花や上田秋成などを梅雨時期に読むといっそう湿気が体にまとわりつくように感じられました。日本人なのに日本の風土や文化のことを実感として知らなかった……としみじみ思いました。それから日本の風土を体感し、調べて考える面白さにはまり、そのまま今でも研究を続けています。

2. 学問

日本文学とはどのような学問ですか?

基本的には日本に住んでいる人たちが読み楽しんだ文学を指します。また、文字で書き残されていない伝承や伝説、身体や物で表現する歌舞伎や浄瑠璃なども文学だと、私は捉えています。現代で人気小説が映画化やTVドラマ化したりするように、江戸時代にもメディアミックスと呼べるようなことが起こっていて、密接な関係があるからです。これらの作品について歴史的・文化的な側面から考察する学問です。

このように範囲が非常に広いので、私の授業では日本文学の入り口を楽しんでもらおうと思っています。古代、中世、近世、近代から現代に至るまでの文学の中で、まずはこれと思う場所をかいつまんで紹介し、日本文学の歴史的変遷や基本的な知識を身につけてもらいます。

3. 研究

先生の研究について教えてください

私は江戸時代を中心に研究していますが、結局は万葉集などに代表される古代の文学から平安時代の源氏物語、中世の百人一首など、すべての時代の文学を見渡す必要があります。江戸時代の人たちは非常に広い興味や知識をもっていて、過去の時代の文学をベースにしたり大きな影響を受けたりしているからです。例えば、源氏物語は江戸時代の「湖月抄」と呼ばれる板本の注釈本のおかげで庶民に広まりました。そんな江戸時代に、文学が人々にどのように楽しまれていたかを研究しています。

著書では、木下長嘯子や月岡芳年にスポットライトを当てています。木下長嘯子は江戸初期の歌人で、月岡芳年は江戸末期の浮世絵画家です。どちらも動乱の時代に生きた人物ですが、彼らは切羽詰まった環境だからこそ、文学や芸術と真摯に向き合った人たちです。長嘯子は関が原の戦いを「出家」というかたちで生き延び、芳年は上野戦争で戦った人々を直視し描き出しました。生きるための文学であり、芸術だったのです。

いっぽう、常に切羽詰っていたかといえばそのようなことはありません。例えば、木下長嘯子は友人から「近き山紛はぬ住まひ聞きながらこととひはせず春ぞ過ごせる」という歌をもらいますが、これは「粽(ちまき)を贈ります」という意味を詠みこんだ和歌です。もちろん長嘯子も和歌で「粽をありがとう」と返事しています。現代、和歌というと堅苦しいイメージですが、彼らは日常に和歌を楽しんでいましたので、今読むとかえって独創的で面白いものです。また芳年の作品には、人間の鼻を下から覗くような変わったアングルで描かれているものがあります。前の時代とどのように違った表現に挑戦するのか。和歌でも、美術でも、それぞれ時代的な特徴を反映しています。

4. 面白さ

江戸時代の日本文学を学ぶ面白さはどんな点でしょうか?

現代人の生活や文化のルーツを探ると、江戸時代がターニングポイントであることが多くあります。例えば、二十四節気の冬至には柚子湯に入ったり、土用丑の日には鰻を食べたりといった風習は、江戸後期ころから庶民に流行りだしたものです。

また、よく江戸時代は町人、庶民の文化といわれますが、文化・文学的な部分を探っていくと、完全にオリジナルではなく宮中の行事がベースになっているケースが多くあります。例えば七夕やお雛様も原型は宮中行事です。それらを武家や町人が、面白がって受け入れ、より自分たちの趣味に合わせて変化させ定着していったのが江戸の文化だったりします。

こうした現代との繋がりや文化の成り立ちを感じられるのは面白いと思いませんか。江戸時代には印刷技術の進展と共に、非常に数多くの出版物が流通しました。また、紙の普及により記録もよく残っています。現存する資料が多いので、調査のし甲斐があります。

5. メッセージ

入学を検討されている方や、これから先生の授業を受講する学生にメッセージをお願いします

文学を学ぶということは、(1)想像力、(2)読解力、そして(3)表現力を身につけるということです。人が人生で体験できることには限界がありますが、文学を通して、人がこういう時にはどう思って、どう動くのかをバーチャルで体験し、想像し考えるきっかけになります。自分だけの考えにとらわれることなく、さまざまな視点を学ぶよいきっかけとなるはずです。そしてそれは、自分の考えを人に伝えるコミュニケーション力を高めるための勉強にもなります。ぜひサイバー大学での学びで、こういった力を身につけてください。

よく、文学になんの意味があるのか、生活で役に立たないというような考えの方もいらっしゃいますが、実はものすごく実用的です。文学を通して好奇心を刺激することで、自分を再発見し世界を知る。そんなイメージをもちながら文学を楽しんでもらえればと思います。

プライベートQ&A
プライベートQ&A

  • Q
    どんな学生でしたか?
    A
    各所の展覧会へ行ったり、歌舞伎を観に行ったりとよく遊んでいました。アルバイトは旅行がしたいと思ったので、バス旅行の添乗員をしていました。ガイドさんが観光地について説明するのを後ろで聞かせてもらうのが楽しみでした。
  • Q
    休日はなにをしていますか?
    A
    日本文学のほかに、美術にも興味があるので美術館、博物館巡りをしています。普段見られないものが鑑賞できるのが良いです。また、古地図を見て街歩きもしています。
  • Q
    古地図街歩きについて教えてください。
    A
    お寺や神社、お城を基準に街歩きをして、昔の佇まいを想像しながら歩くと楽しいです。東京が中心ですが、さまざまな地域に行っています。ご当地の郷土料理や甘味処は外せませんね。 最近は、GPSと連動して歩けるスマートフォンの古地図アプリもあり便利です。
  • Q
    お気に入りのモノを見せてください。
    A
    大学の非常勤講師が決まった時に、後輩にもらった万年筆です。とても綺麗で大事にしています。普段使いはペン先を自分の書き癖に合わせてあります。添削用に赤インクを入れた万年筆もお気に入りです。
  • Q
    尊敬する方は誰ですか?
    A
    指揮者のクラウディア・アバドを尊敬しています。もう亡くなってしまいましたが、とても楽しそうに演奏する姿や、自分の好きな音を奏でてくれるので物を考えるきっかけにもなります。
  • Q
    国文学作品を見るのにどこへ行ったらよいですか?
    A
    立川にある国文学研究資料館です。ぜひ興味がある方は行ってみてください。
    ※今回の撮影もここで行わせていただきました。

    ■国文学研究資料館のWebサイトはコチラ

教員紹介

大内 瑞恵
大内 瑞恵
OUCHI Mizue
  • 客員准教授
  • 教養科目

近世日本における古典文学の受容というテーマで幅広く、文学研究を行っています。

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