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テクノロジー 2019.12.16

勉強垢とstudy with me

田中 頼人 田中 頼人 准教授
勉強垢とstudy with me

サイバー大学にて、私の担当科目では「大学の講義や資料だけでなく、学外の様々なリソースを使おう。学習に特化したものでなくても構わない。スケジュール管理や意欲向上ためのツールも使おう」と伝えています。ここで、学習に特化しない汎用的なサービスを意欲向上に役立てる例として、TwitterやInstagramの「勉強垢」を思い出す人も多いのではないでしょうか。

「垢」はアカウントを示す俗語で、Google Trendsを見ると2015年頃から急速に広がったことがわかります。利用者は中高生が多く、学習内容や得意分野、志望校などが自己紹介欄で示されます。その他、勉強する様子の写真や模試の成績表、返ってきた試験の答案を(個人名などは除いて)載せたものもあります。ハッシュタグは「#勉強垢」だけでなく「#勉強垢さんと一緒に頑張りたい」や「#勉強垢さんと繋がりたい」もあり、ソーシャルメディアの特性が生かされていることがわかります。「#大人の勉強垢」や「#主婦の勉強垢」もあります。

Instagramの勉強垢は華やかで文字通りの「インスタ映え」

Twitterと比べるとInstagramの勉強垢は華やかで、かわいい文房具や整然とまとめられたノート、息抜きのお菓子やコーヒーなど、文字通りの「インスタ映え」も目立ちます。2019年11月現在、Instagramでの「#勉強垢」では130万件以上の投稿を見ることができます。
これらの勉強垢に対して「人の目を気にしすぎるのは本末転倒」「きれいな写真を撮って投稿する間に、少しでも勉強すれば?」のような、手厳しい意見が出ることもあります。しかし学習本来の目的を見失わず、負担にならない程度に使えば十分役に立つでしょう。

また「勉強垢」は日本のものですが、学習者どうしが繋がろうとする傾向は他の国・地域でも共通です。その中にはYouTubeの動画を活用したモチベーション維持の例として"study with me"があります。特に2018年4月に英国の高校生Jade Bowlerさんが自らの学習の様子を公開した動画は注目を集め、JadeさんはStudy Tuber(スタディチューバー)というジャンルを確立させました。
皆さんには「家では勉強できないがカフェや図書館ならできる」という経験はあるでしょうか。これは誰かに見られていると頑張ってしまう「ホーソン効果」の一例として説明できます。study with meはカフェや図書館の効果を、YouTubeを通じて世界中に拡張したものです。

Study Tuber(スタディチューバー)Jadeさん

Jadeさんは動画で顔を出していますが、その他のものでは顔を写さないものが多く、喋りもせず、編集も最低限。音楽もなく、黙々と勉強する様子が続きます。1時間程度の動画が中心ですが、中には12時間の長丁場ものもあり、その場合は「〇時から〇時は勉強、その後に1時間ランチ」のような計画表が画面の端に示されます。ユニークなものでは「ハーバード大学の図書館で勉強します」と宣言し、その証拠としてハーバードの図書館まで歩く様子を動画の冒頭に入れた、少々凝った作りのものもあります。

サイバー大学の皆さんへ

勉強垢やstudy with meのような多様で、工夫にあふれたツールの使われ方を見ると「人間は単に学習するだけではない、社会的に学習する生き物だ」という特徴を思い知らされます。「学習用に特化したものでなくてもよい、使えるものを積極的に使い、自分たちの学習を深めていこう」ということを、これからもサイバー大学の皆さんに伝えていこうと思います。

田中 頼人
田中 頼人
TANAKA Yorihito
  • 准教授
  • 専門科目

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター、放送大学ICT活用・遠隔教育センター、早稲田大学教育学部を経て2014年11月より現職。学習支援システム(LMS)の開発、情報教育の実践に関心を持つ。