日本には中小企業が380万社くらいあります。上場企業は6千社ちょっとでしょうか。
これらの会社の全てに「社長」がいて、数千万人の社員を雇用しています。たくさん社長さんがおられる訳ですが、その仕事の中身について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
社長に求められる役割は会社の状況によって様々ですが、会社で起こる全てのことについて責任を負う必要があります。規模の大小、様々な業種を問わず、社長の責任は同じです。そういう見方で社長という仕事を考えてみると必要なスキルも自ずと定義できてくると思います。
受講生のなかにはシニアな経営者の方もいらっしゃいますが、毎学期必ずといって良いほど、必修科目の「企業経営入門」の授業評価アンケートの自由記述欄で「もっと早くこの授業を受けたかった」という感想があります。長年、独力で勉強してきた社長さんが経営全般について学びなおす機会はなかなかないようです。
私は「社長業」というものがあると考えています。そして、その「社長業」を誰でも学べるものにしたいと考えて講義を作っています。会社の経営における判断は全て個別で具体的なものばかりなので、一般論では語れないところがあります。また、経営者の人となりは千差万別ですから、経営スタイルが一人ずつ違っていて当然です。さらに、事業は分野毎に高い専門性が求められ、必要なスキルも違います。
このような「社長業」の多様性から、ビジネスのフィールドはいわば「無差別級の闘い」の場ではありますが、ビジネスモデルという新しいルールで自分たちの土俵を作ることもできたりします。しかし、勝ちを得るための基本的な知識というものはどんな分野にもあるものです。会社を経営していく社長さんには、まずは囲碁でいうところの「定石」を学んで欲しいのです。それが「経営学」だと考えていただきたいと思います。
ITやAIの登場によって時代の変化が激しくなる中で、自己流で時代の荒波を乗り越えて行くのは益々困難になってきています。自分と同業界の競争相手が知的に装備しているとしたらどう闘っていくべきでしょうか。異分野から進出してくる競合が現れることも今では日常茶飯事になっています。
日々の経営判断に役立つ知識や価値軸を学ぶ必要性が強まっている中で、私の講義を社長業に役立ててもらいたいと願っています。自分が経営者の方々と接して得たことを、自分の経験として伝えていくことをこれからも続けていきます。