セミナー情報

「DNAと化石が語るヒト、家畜、コメのやってきた道」を開催しました

世界遺産学部 小澤智生教授

「日本人はどこからやってきて、どのような経路をたどって成立したのか」
そのルーツの謎を紐解く鍵が、DNA情報の解析にあります。

2010年1月23日、DNA考古学と日本人のルーツについてサイバー大学の教員がわかりやすく解説するセミナーが東京都港区の首都圏コンピュータ技術者株式会社東京本社で開催されました。
本セミナーは同社協力のもと定例開催しているもの。11回目に当たる今回は、世界遺産学部の小澤智生教授が「DNAと化石が語るヒト、家畜、コメのやってきた道」をテーマに講演を行いました。冬空が格別に澄んで青が美しく映えた土曜日の午後、DNA考古学と日本人のルーツ探究に関心のある19名が会場に集結しました。

会場風景

セミナーは、同社取締役篠原博氏のご挨拶からスタート。
「私たちIT技術者と今日の講演テーマは、一見すると何のつながりもないように見えます。しかし、酪農家との共同プロジェクトによる牛にICチップを埋め込み、その生育状態を管理するシステムの関発等、IT技術者にはIT以外の幅広い見識が求められることも多く、このセミナーを皆さんの見聞を広め、互いに学び合う場として活用していただければ幸いです」と会場に呼びかけられました。

続いて、本学IT総合学部の勝眞一郎准教授が挨拶。「ビジネスの場面においては、とかく『これからどうするのか』という未来の動向に着目しがちだが、『これまではどうだったのか』という過去についてはDNA情報で探ることができる。今日のセミナーでDNA情報の持つ可能性について学びたい」と自ら学ぶ意気込みを述べました。

講演の様子

講演の様子

講演は、小澤智生教授の自己紹介から始まり、2005年の愛知万博で展示されたユカギルマンモスのミトコンドリアDNAのすべてのゲノム解析に成功したことや、仙台伊達家の藩主正宗から3代にわたる親子関係をDNA解析というアプローチで証明したことなど、そのユニークな研究実績を披露しました。

本編ではまず、日本人のルーツについて、現在のポピュラーな学説である「二重構造モデル」を紹介。「アイヌや琉球人に代表される日本の先住民である縄文系に、北東アジアから日本に渡来してきた弥生系が付加し、現在の日本人集団の原型が構成された。そのことは頭骨や歯の形態からも検証されている」と説きました。
また、ミトコンドリアDNAやY染色体DNAのハプロタイプ(塩基配列の型)の解析で、日本人のルーツや日本人集団が成立するまでの移動経路について、形態検証よりも高い確度で類推できることに言及し、「人類共通の祖先は約20万年前にアフリカで誕生した。その後アフリカを出て、日本に入ってきた移動経路には2つのルートがある。南海岸ルートのアラビア半島を経てインドから東南アジア経由で北上し日本入りしたルートと、アラビア半島から西アジアを経てユーラシア大陸を東進して中国・朝鮮半島を経て日本に渡ってきたルート。日本人は全く違う2つのルートからやってきた祖先を原型とする非常にユニークな集団であることが、現在の研究データから推定できる」と、Y染色体DNAの系統図やハプログループの分岐形態のマップを用いた説明を行いました。

続いて、私たちの食卓に出てくるコメや家畜のルーツをテーマに取り上げ解説。「稲には、コシヒカリ等に代表される温帯ジャポニカ稲、インドネシアやフィリピンで栽培される熱帯ジャポニカ稲、インド起源のインディカ稲の3つがある。従来、弥生系の渡来人が温帯ジャポニカの水稲を大陸から持ち込んだことが稲作の始まりとされていた。しかし、下乃郷遺跡や三内丸山遺跡等から出土した炭化米のDNAや土器のプラントオパール(非結晶含水珪酸)を解析したところ、熱帯ジャポニカが含まれていたことが判明。水稲が広まる以前の縄文前期から熱帯ジャポニカが陸稲栽培されていたことが、科学的検証によりほぼ確実となった」と語りました。

また小澤教授自身も論争の当事者であったという「弥生ブタ論争」について、「従来は『弥生時代には既に大陸から持ち込まれたブタの飼育が広く行われていた』という説が有力だった。しかし各地の遺跡で出土した骨のミトコンドリアDNAを分析したところ、大陸系のブタではなく、ニホンイノシシのハプロタイプのデータが次々と出てきた。形態により古代ブタとニホンイノシシを明確に区別できないため、古代ブタが飼われていた証拠は現在のところない」と論争の概観を紹介しました。

質疑応答

質疑応答の様子

10分の休憩をはさんだ質疑応答では、会場から「弥生ブタ論争」について遺跡で出土した骨がブタではなく、イノシシだと考えた背景や理由、2000年に発覚した旧石器の捏造事件についての感想、偽装食品問題についてDNAの専門家としての考察を問う質問等が次々と飛び出し、会場が熱気に包まれました。

途中、参加者からの「このセミナーをきっかけに、本を読んでもっと調べて勉強したい」という声に応え、小澤教授が書籍の紹介をする場面もあり、参加者の「もっと知りたい!」という学ぶ意欲の高さと、その意欲を真摯に受けとめ丁寧な解説を行う小澤教授の姿が印象的でした。

予定時刻を15分過ぎても途切れることなく質問が続きましたが、参加者は後の懇親会でも小澤教授のもとに集まり、教授から繰り出されるDNA考古学に関する話題に熱心に耳を傾け、充実した時間を過ごしました。


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