「古代エジプト『太陽の船』発掘・復原プロジェクト」

工学修士
南アジア、東南アジア、建築史、文化財、製作技法
1958年、東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院を卒業後、早稲田大学理工学部助手、早稲田大学理工学総合研究センター客員講師を経て現職。南アジア・東南アジアの建築の歴史が専門。早稲田大学エジプト学研究所では、太陽の船プロジェクトに参加。著書は『仏教美術事典』(東京書籍、共著)など。
古代エジプト発掘調査の1つに、「太陽の船」プロジェクトがあります。本プロジェクトの関係者の1人として、その概要を紹介します。


実は同じ規模の石室がすぐ隣にもう1つありました。廃土に埋もれていた2つの石室が近代になって最初に発見されたのは、1954年のことでした。エジプト政府はそのうち1つの石室の蓋石ブロックを取り上げ、中から約650点の木製部材を発見しました。そしてそれらを20年以上の歳月をかけて組み立てたところ、長さ約43メートルにも及ぶ世界最古の木造の構造船がよみがえったのです(写真3)。
2つ目の石室にも船が入っているのでしょうか・・・。1980年代の終わりから90年代の初めにかけて、アメリカ隊や吉村先生の調査隊が、相次いで調査を行いました。そして蓋石に開けた小さな穴から内部を観察した結果、やはりそこに木製部材が収められていることを確認したのです(写真4)。
これら2隻の船は、単なる副葬品ではなく、死後に太陽神とともに昼夜の天空を駆けめぐると考えられていた王の「太陽の船」として埋納されたのではないかと推定されています。そうだとすれば、古代エジプトの思想を知る上で大変重要な遺物であり、2隻目を組み立てるとどのような姿の船となるのか、多くの人が注目をしているのです。
調査隊がサンプルを採取して分析した結果(写真5)、2隻目の木製部材は、残念ながら劣化が進行し、1隻目と比べてあまり良い状態ではありませんでした。しかも石室は、湿度90%前後ときわめて湿気が多く、そこから不用意に木製部材を取り出そうものなら、あっという間に乾燥により部材が崩壊してしまう危険も予想されます。したがって石室の内部と同じ環境を外にも作り、木製部材を取り出した後にその中ですばやく保存処理をするといった、特殊な発掘の方法が求められるのです。
このプロジェクトの趣旨に賛同して資金協力に手を挙げてくださる企業が見つかり、また日本国政府からも、草の根文化無償資金協力の援助をいただくことができました。そして準備が整った2009年、いよいよ現地にて発掘のための諸施設の建設に取り掛かかることができたのです。


まず、石室およびその周囲を覆う、幅20メートル、長さ約40メートルの大きなテントを建設しました(写真6)。このテントは、砂や風雨をシャットアウトし、作業に適した清潔な環境を作ります。テントは日本製で、軽量な上に丈夫、しかも建設が容易であり、遺跡の真っ只中に建てるには最適の施設でした。続いて石室の中と同じ温度・湿度の環境をテントの中に部分的に作るための、大容量の空調機と加湿器を、やはり日本から輸出して設置しました(写真7)。そして1枚が最大で約16トンの重量を持つ蓋石を持ち上げるためのクレーンを建設し(写真8)、現在は蓋石の上に残っているピラミッド囲繞壁の解体除去作業に取り掛かるところです(写真9)。


このプロジェクトは、国籍を超えた多くの人々が共同で取り組んでいる事業です。私が紹介できるのは、そのごく一部にしか過ぎません。興味のある方はぜひシンポジウムや展覧会・テレビ放送などの機会に、注目いただければ幸いです。



















