災害復興と情報技術 ―プロジェクト「思い出サルベージアルバム・オンライン」の紹介―

博士(学術)
社会情報学
信州大学人文学部人間情報学科を卒業後、名古屋大学人間情報学研究科博士課程前期課程を修了、同後期課程を満期退学。明治大学ポストドクター研究員などを経て、2011年よりサイバー大学に着任。
東日本大震災の復興支援と聞くと、何を思い浮かべますか。たとえば、がれきの撤去、炊きだし、避難所の運営。少し時間を経ると、仮設住宅の建設、復業・就業支援、そしてそれらすべてに対して有効な義援金、といったところでしょうか。
しかし、被災地で失われたものは衣食住だけではありません。人々の思い出の品である写真もまた、津波に流されてしまいました。私はその「失われた思い出」を情報技術で少しでも取り戻そうとする研究プロジェクトに参加しています。
被災地に入った自衛隊は、救助活動の最中にアルバムなど被災者の思い出の品と思われるものを見つけると、直ちに処分するのではなく、一時保管していました。ところが、泥水に浸かったアルバムは、ひと月もすると腐蝕が進んでしまうことがわかったのです。
そこで、泥はきや水洗いをしてできる限り写真をきれいに洗浄した上でデジタル化し、被災地の方にお返しするプロジェクト「思い出サルベージアルバム・オンライン」が立ち上がりました。本プロジェクトは、私が所属する日本社会情報学会(JSIS)でお世話になっている研究者が、津波の被害が大きかった宮城県亘理郡山元町と一緒に始めたものです。

チームには研究者・山元町関係者以外にも、写真の専門家など、さまざまなプロフェッショナルが続々と参加。企業やボランティア団体などとも協働し、7月にとうとう、山元町から回収された推定70万枚もの写真の洗浄とデジタル化を終えました。

もちろん、デジタル化してハッピーエンドではありません。山元町の方に写真を見つけてもらわなくては、目的は達成されないのです。プロジェクトでは写真を検索するためのアーカイブを構築し、アルバムを探しやすくするためのインデックス(目次)をつくっています。
また、返却の場でもさまざまな情報技術を用いています。たとえばiPad。ソフトバンクから無償で貸与された20台が、アーカイブやインデックスの閲覧デバイスとして活躍しています。

しかし、人は過去なしに健やかに生きることはできません。私は個人的にそのことを実感しています。プロジェクトの仲間も、同じように考えている人が多いのではないかと思われます。情報技術は、思い出を取り戻すために大きな力を発揮します。それを検証する社会実験が「思い出サルベージアルバム・オンライン」であると、私は思っています。




















