IT総合学部 教員コラム

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【リレーコラム 第6回】 2010.1.18

「冒険のすすめ ~ベンチャー(Venture)はアドベンチャー(Adventure)~」

久保田 達也

久保田 達也 Kubota Tatsuya

 

(株)イッツ代表取締役、日経新聞ビジネスセミナー専任講師、財団法人インターネット協会評議委員、東京工科大学大学院客員教授

 

私は大学教授であり経営者でもあるのですが、元来は冒険家のつもりで生きています。先生であり、経営者であり、冒険家であると聞くと「いろいろやっていますね、たいへんでしょう」とよくからかわれるのですが、どうして実はみんな同じなんです。

 

例えば大学で教えている「起業」「オンラインマーケティング」「企画力」は経営者だと実践本番ってことに過ぎないのですが、おもしろいのはそれらの冒険の基本はすべて冒険のノウハウに類似している。いやむしろ冒険の基本はベンチャービジネスの基本である、と言っても過言ではないんです。
冒険とは『誰もやったことがない事をしでかす』ことなのですが、そのノウハウは『誰もやったことがないビジネスを立ち上げて世の中の常識をひっくりかえす』ノウハウとそっくり同じなのです。
それに最近の冒険は衛星回線によるインターネットのリアルタイム情報を使うため、冒険家はネット技術に精通していることも共通しているんです。

例えば、エベレスト登山ではGoogleマップによるエベレスト3D立体画像でシミュレーション登頂計画を立てるし、7000mのベースキャンプではテントの横に簡易パラボナアンテナを設置してインターネットによる衛星気象情報を注意深く観察しながらエベレスト登頂のタイミングを決定したり、第一キャンプ第二キャンプのスタッフたちと交信や世界中にいるアルピニストたちとSNSで雑談したりしているんです。氷点下50℃の極限状態での情報管理は生死が関わっているだけにピーンと張りつめたコラボが行われるんです。
「今から登頂アタックをかける、もし帰ってくることができなかったら、シェンクのピッケルをおまえにやる」なんてフランス人に宛てたコメントなんかもあって熱いんですよね。
そんな経験から生きた最先端ネットワーク情報管理とは何か、真剣にビジネスに応用できるノウハウが見えてくるんです。

写真1

 

冒険は登山に限ったものではなく、形にこだわる必要はありません。
バイクでアメリカ横断した時は、行く先々で写真や旅のコメントなどのWEB更新を衛星回線を使って行いました。LAからNYまで2ヶ月間の一人旅。いろいろ寄り道しながらの旅でインディアンと生活したり、竜巻に吹っ飛ばされたり、横殴りの雷に追っかけられたり、ロッククライミング、カヌー、MTB、トレッキングなど冒険の連続で、子供の頃に見た米国テレビドラマ「ルート66」みたいな気分でしたね。
WEB更新は悪天候で衛星回線が通じずモーテルの電話回線から更新したり、パソコンのキーボードが壊れてグランドキャニオンの谷間で修理したり、キーウェストまでの7マイルスブリッジを走行するバイクのオンボードからリアルタイム映像配信をしたりしていました。
そのサイト情報を見てバイクを購入した人がいたらしく、ある日「おかげさまで乗っていただいているバイクの売れ行きが伸びはじめたのでなんとしても最後(NY)まで完走してください、お願いします」とメーカー担当者からメールが届いたのには笑いましたね。
アメリカ人のライダーも見ていたらしく、行く先々で「サイトを見た」と街の入り口で迎えてくれたライダーたちがいて、「襲われるんじゃないか」とビビったこともありました。ネットは国や民族を超えて人をつなげるんですね。
あ、そうそう、あの悪名高きヘルズ・エンジェルスのパーティにも呼ばれたこともあったんですよ。でも今はみんなおじいさんで交通事故に遭った子供たちのチャリティーパーティーなんかやってたんです。ほんとは悪党じゃなかったみたい。

写真2

 

写真3

ゴビ砂漠を縦断した時は何日間も一人っきりでした。360度の砂砂砂の地平線、生き物は自分だけ、夕日が沈む時は自分の影がマッハ3で地平線に伸びていく世界です。
夜は月明かりが反射して銀の砂漠になり、自分がどこか他の星の上にいるように思えましたね。満点の星空を流れ星が雨のように降っていました。すごいのは地平線から地平線まで飛んで行くんですよ。願い事なんか20くらいOKなんだよな。誰もいない砂漠の真っただ中でWEB更新しようと衛星回線を接続して、流れ星のリアルタイム中継を試みていたとき、なんと大手町で残業しているOLから「もういやだ、そこに行きます、そこどこですか?」とメッセージが来て、砂漠で一人笑い転げていました。だってそのとき実は遭難していたんです。
方位磁石が砂の鉄分の影響?で狂ってしまい遭難。でも地元ヘリコプターのパイロットに救助されました。GPSも衛星回線もダメ、結局助けられたのは元モンゴル軍パイロットの勘だったんです。人間の潜在能力はハイテクを超えているんですよね。その後一週間パイロットに毎日ビールを奢っていましたっけ。

 

モンゴルラリーの途中(天山山脈、増水した川にバイクごと流された)で遭難してしまい、あやうく溺死するところを馬で駆けつけた視力7.0の遊牧民の若者たちに助けられ、彼らの家族としばらく一緒に生活していました。毎日朝から羊を追い、夕方帰ると家族団らん、馬乳酒で歌い、夜はゲル(テント)から見える流れ星を数えて眠る日々でした。チンギスハンの末裔たちは「のろし通信」をリレーで行い、その卓越した視力、聴覚、嗅覚で情報交信しているのを見て「こっちの方が凄い!」と感動しました。彼らは遊牧民だから手紙も出せないし、第一どこにいるのかもわかりません。日本から3時間(ウランバートル)のところに彼らは今日も遊牧民をしていると思うと世界は広くて身近なんだなあと思います。

写真4

 

冒険の話はまだまだ尽きないのですがこの辺にしておきます。
最後に一言。
世界中のあらゆることが知り尽くされたとしてもこの世は冒険に満ち満ちているし、100年に1度の大不況で経済が大混乱になればなるほど、ベンチャービジネスのチャンスは世界のあらゆるところで芽を出している。
どうでしょう、冒険のようなビジネスをしてみませんか。
いつも通っている道を変えるだけで冒険の一歩、いつもやっている仕事を変えるだけで冒険ビジネスの一歩です。

 

 

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